吉野天人(よしのてんにん)

都の人が、吉野山の桜を見ようと出かけてきます。山奥深<分け入ると、一人の女が現れます。不審に思い尋ねると、この辺りに住む者と答えますが、いつまでも帰る様子がなく、都人と一緒に花を楽しんでいます。都人が怪しむと、自分は天人であると明かし今夜ここに滞在して信心すれば、五節の舞をお見せしようと約東して姿を消します。やがて夜になると、不思議なことに虚空に音楽が聞こえ、天人が天より降りてきて、世にも美しい舞を舞い、又花の雲に乗って消え失せます。

附子(ぶす)

附子という猛毒が入った桶には近づくなと言って主人は外出します。太郎冠者は好奇心から、次郎冠者の協力を得て蓋を開けて、味見をすると砂糖であるとわかります。すべて食べきってしまった所に主人が帰ってきて・・・。

野守(のもり)

出羽の国(山形県)羽黒山からやってきた山伏が、大峰葛城山へ行く途中、大和国(奈良県)春日の里につきます。そこで野守の老人に行き合います。この老人は、昼は人となって野を守り、夜は塚にこもって住む鬼神なのです。山伏は傍らのいわくありげな水について尋ねます。その水は野守が姿を映す水鏡であり、本当の野守の鏡というのは、鬼神の持っている鏡のことだと答えます。山伏が本当の鏡を見たいというと、鬼の持つ鏡を見ると恐ろしくなるので、この水鏡を見なさいと言い捨て、塚の中に姿を消します。(中入)山伏が思いもよらぬ奇特にあったことを喜び、塚の前で祈っていると、鬼神が鏡を持って現われ、天地四方八方を映して見せたのち、大地を踏み破って奈落の底へ入ってゆきます。